title  
TALK
TOUR
HOME
KAZAN

2003.07.27 下北妖怪夏祭り・第8回世界妖怪会議

2003年7月27日、青森県むつ市にて
下北妖怪夏祭り・第8回世界妖怪会議が開催されました

以下のレポートは私花山の記憶に基づくものであり、
内容が間違っている場合があるのでご注意ください。
会議の雰囲気が伝われば幸いです。


 

会場は1000人以上収容可能なプラザホテルむつ。
その会場も開演前にはほぼ満席になりました。

写真は、少しでもよい席を取ろうという妖怪ファンの長蛇の列。
ホテルの入口からもあふれています。

 
 

妖怪会議開会!

客電が落ち、「西院河原稚児御和讃(さいのかわらおさなごごわさん)」が流れてくる。舞台上(かみ)より地元の子供たちが手に風車を持ちながら登場。舞台をぐるっと移動して退場。

『怪』編集長・郡司さん登場。あいさつ。

郡司:8回目の妖怪会議は、妖怪のふるさと下北半島での開催です。

出演者の紹介。順に登場、着席。多田克己さん、荒俣宏さん、京極夏彦さん、佐野史郎さん。


恐山の冷水

郡司:佐野さんは下北は初めてだそうですが。

佐野:撮影でも下北半島まで来る機会はなかなかなかったのですが、今回の妖怪会議で初めて来ることが出来ました。念願の恐山にも昨日登ってきました。すばらしい光景に感激しました。

郡司:京極さんは何回目ですか?

京極:うーん、何回でしょうね? 私は北海道出身なんですが、最初に本州に行ったのが恐山でしたから。200m地面を掘ると妖怪病院があるというところですからね。土中恐山。
あ、漫画「ゲゲゲの鬼太郎」の中で、鬼太郎がやられて肉体を溶かされてしまった時がありまして、そのとき恐山の妖怪病院で治療してしまうという設定があるんです。(一般の方に向けて恐山妖怪病院の説明)

佐野:私は島根・松江の出身なので近くにも霊場はあったのですが、さすがに恐山は霊場としての規模が大きいです。
それに、映画人として、川島雄三監督の出身地という意味でも下北半島には来てみたかったんです。

京極:荒俣さんは昨日、ホテルに到着するより先に恐山に登ったそうですね。

荒俣:こちらには昨日の夜遅くに到着したので、夜の恐山に登ってきました。地元の人はさすがに行きたがらないですね。

京極:地元の人でなくても行きたがらないような。(笑)

荒俣:閉まっていたんですが中を一周してきました。それから恐山冷水でお水を三杯飲んできました。夜の恐山はほんとに真っ暗で、闇の濃さが印象的でした。あの闇だけで21世紀食っていける、貴重な財産だと思います。

郡司:多田さんはいかがですか?

多田:今回が三回目です。最初に来たのが10年前、そのあと2回です。
恐山には、あんまり怖いという感じはしませんね。

多田さんがしゃべっている間に太鼓の音が聞こえてくる。照明が暗くなり、鬼太郎のテーマ。
鬼太郎・ねずみ男・児啼爺・砂かけ婆・猫娘・目玉親父などの妖怪着ぐるみに連れられて、水木しげる大先生登場。会場の拍手は最高潮に。

郡司:先生、開会宣言をお願いします。

水木:これから世界妖怪会議が始まります。(なんだか人ごとのような開会宣言)

会議出演者に恐山の冷水が届けられる。恐山の冷水は1杯飲むと10年、2杯飲むと20年若返り、3杯飲むと死ぬまで若返るといういわれがある湧き水。

出演者一同、冷水を飲む。

荒俣:我々はともかく水木さんがお飲みになったら、2杯で100歳まで長生きできますね。
あ、でもお飲みになっておられませんか。

水木御大、水飲まず。

荒俣:なるほどあまり関係ないという感じですね。もういらないそうです。(笑)


電気の副作用

水木:私は電気が妖怪を殺したと考えとります。ニューギニアへ行くと夕方から妖怪だらけです。日本では死にかけとるけど、ニューギニアは妖怪の世界です。

荒俣:水木三原則のその1ですね。「闇が必要。電気が要らない。」

荒俣:闇といえば、平田篤胤の本に闇の中でタマが光る話が出てきます。岩波文庫にも収録されている「仙境異聞」という本なのですが、主人公の寅吉少年が「暗いときにはどうやって本を読めばいいのか」妖怪に尋ねるシーンが出てきます。妖怪の答えは「男なら大丈夫。タマを光らせて本を読めばいいのだ。」「僕のは光らないじゃないか」という寅吉に「あんたのは毛がないからだ。」と。

京極:昼間からすごい話ですね。(笑)

多田:寅吉をさらった妖怪って天狗ですよね。妖怪には天狗火というのもいますが、あの光はキンタマの光だったのですね。

佐野:あのー、私は妖怪会議に参加したのは初めてなんですが、いつもこんなのですか?

一同:こんなものです。


霊魂をつかまえる

水木:恐山、確かにあそこは霊がさまよっているようです。もう2,30年あれば何かわかるかもしれないけれども、もう81ですから。誰か霊のさまよう場所を研究してつかまえてもらいたいです。ねえ、荒俣さん。

荒俣:我々は霊に怖がられているようでなかなか近づくことが出来ません。

京極:わたしもですね。多田さんの場合は避けられてる様な気もしますが。

多田:避けられてる?

佐野:私は臆病なのでなるべく関わりたくないのですが、気にはなるんです。何かいそうな感じが。

佐野:水木先生の漫画では霊魂をつかむシーンがありますね。天ぷらにしたり。(笑) あの霊魂を手でつかむという表現、ほかには見ない表現ですね。

京極:確かにそうですね。霊魂や火の玉といえば、気体とか光の残像だと考えていたりするけれど、御大の漫画に出てくる魂は手でつかめますからね。水に入れると逃げないとか。(笑)

水木:まあ、あれはわかりやすくしとるのです。ほんとの霊はつかみにくいです。

水木:電気が妖怪を消したんです。光を強くしすぎると妖怪は来られない。夕方から妖怪の気配はあるんです。妖怪はいないんじゃない。電気がないニューギニアでは生き生きしてます。ねえ、荒俣さん。

荒俣:先生が小さい頃の境港には電気は少なかったんですか?

水木:境港にも電気はあったけどさみしかったです。妖怪を感じるには妖怪感度が必要です。ニューギニアの土人たちは感度がいい。電気がないからです。

荒俣:先生は戦争中にも妖怪を感じてらっしゃったんですね。水木さんの中では、日本軍の兵士の割合は三分ぐらいだったんでしょうか。
見張り中にオウムを見ていたら部隊が全滅してしまったとか。こんな兵隊は日本軍には一人もいなかったのではないかと。(笑)

京極:一人はいました。ここに。(笑)

京極:電気がないほうがいいからといって、人が少なすぎても駄目ですね。人間がある程度混じっていないとだめ。

荒俣:宇宙からランドサットで見ると、夜の闇が多いのは北朝鮮。ほんとうに真っ暗。真っ暗だけど人はたくさんいますからね。妖怪もたくさんいるのではと。水木大先生が今一番行きたいのは北朝鮮だそうです。先生、一番行きたいのは北朝鮮ですよね?

水木:あそこはみんな空腹だけど、自分は食いしん坊だから心配です。


オシラサマ

郡司:ここでもう一方、ゲストをご紹介します。

鐘の音がなり、続いて幻想的な音楽。イタコさん入場。若い女性。
イタコさん、二回手を打ち、オシラサマ祭文を詠唱。両手にはオシラサマ人形。遊ばせながら歌う。

会場内には水木しげるのオシラサマイラストがプロジェクターで映写。
詠唱終了後、オシラサマの説明。

郡司:オシラサマ祭文は本当は1時間ぐらいあるのですが、時間の都合上ダイジェストバージョンでお願いしました。

多田:先ほど祭文を歌っているとき、男の神様と女の神様を遊ばせていましたね?(以下、イタコさんにオシラサマについて勢いよく質問、道祖神との関連・地域差など。イタコさんやや困り気味だったので省略)

イタコ:オシラサマは地域によっていろいろ姿が違います。南部ではてるてる坊主のようなものですが、津軽では冠をつけて装飾されています。

京極:先ほど人形を遊ばせていましたが、人形を遊ばせるというのは神様を活性化させるということですね。いざなぎ流もそうですが、祭文というものは神様の由来を語っています。物語をリズムにのせて語るという行為です。

荒俣:神様はつかみどころがないのっぺらぼうなものですから、人間の方で入れ物を用意する。芸能は占いや魂鎮めであったり、霊とのコミュニケーションの方法なんです。

佐野:俳優も受信機になって自分じゃない役を演じるという点で似ています。以前チャネラーの役を演じたことがあったのですが、そのときは気が遠くなっていましたね。じゃないと、恥ずかしくてできなかったという話もありますが。(笑)

荒俣:なるほど、テレビで見る俳優の佐野さんはイタコと同職種と言えるかもしれませんね。

佐野:京極さんもそういうところはあるんじゃないですか?

京極:いえいえ作家は裏方です。どちらかというと祭文そのものを書いたりする方です。

郡司:文章に肉体表現が加わる必要があるということですね。


がんばるなかれ

荒俣:水木先生は絵を描くときにはどんな気分でお描きになっていますか?

水木:主人公になった気持ちで描いてます。夢遊状態ですね。イヤな気持ちでないから仕事にしたのです。子供の時からイヤなことはしない。算数が終わってから学校に登校したからね。イヤなことはしなくていいです。私は好きなことをして怠けながら食えるようになった。いつも算数は0点だったけどね。

荒俣:水木三原則の一つ「がんばるなかれ」ですね。
ここで見張り中にオウムを見てたことにつながってくるわけですか。(笑)

佐野:無理するな。イヤなことはしなくてよい、と。

荒俣:水木さんは好きなことをやって飯が食えただけでなく、人一倍食ってるのがすごいです。奥さんに「あんたは食わんでいい」っていって人の分まで食べますからね。(笑)

佐野:なるほど。好きなことは全力でやらないといけないということですね。


イタコ修行

京極:一般にイメージされるイタコというとおばあさんなんですが。

郡司:イタコの中では一番若い方に来ていただきました。

荒俣:私はイタコといえば盲目で苦しい目にあった方がなるものだと思っていましたが、すごく幸せそうですが。(笑)

イタコ:今は幸せですが昔は虚弱体質で。。。

郡司:昨日はすごくおいしそうにビール飲んでましたね。(笑)

イタコ:好きなんです。(笑)

郡司:イタコの修行というのはどんなことをするんでしょうか?

イタコ:高校生の時から通って教わったのですが、私は目が見えるので、師匠から祭文を聞いてそれをノートにメモして覚えました。次に行ったときに覚えていなかったらしかられました。祭文の種類は100ぐらいあります。

荒俣:水木さんの63%を呼び出すことは出来ますか?(註:前回の妖怪会議で水木さんは37%がこの世にいて、残りの67%はこの世にないと明言している)

イタコ:そういうことはやっていませんので。(笑)


水木:私は恐山で寝てみたいです。恐山には霊が舞っているということを知っている人は多いけれども、実際に寝てみたりする人はいない。霊の力を真面目に実験しないと駄目ですね。その場所に行って寝起きしないといかんです。

佐野:先生、昨日恐山でマーキング(立ち小便)されてましたね。いまから行くぞという意志が感じられました。(笑)


鬼太郎BGMと共に妖怪登場。時間切れだったのでしょう、唐突に抽選会へ。
当選者には当日物販で販売されていた水木グッズなどがプレゼントされました。